佐藤可士和のクリエイティブシンキング /佐藤可士和

「アートディレクターとはクライアントの言葉にならない熱い思いを引き出し、社会に伝えていくための的確な方法を見つけ出し、具現化していく仕事。いわばコミュニケーションコンサルタント。」

〈読後感〉
これが佐藤可士和の仕事の根幹となっている。佐藤可士和さんは努めて真摯だと思う。デザインとは自分とクライアントと社会の接点だと思っている。どれかが欠けたら成立しない。
デザイナーの自己満足な作品。クライアントの受け手に届かないセールス。消費者の安ければ何でも良しとするニーズ。など、偏ったものに人をしあわせにする力はないし、ビジネスとしても成り立たないのでは。
クリエイター、クライアント、ユーザーがフラットな立場で、「うれしい」という思いから、お互いを大事にしてる関係が理想だと思う。
佐藤可士和さんのふじ幼稚園のプロジェクトはその関係性が成立している。
ここの幼稚園に入園させたくて引っ越す人もいるぐらいだから。
こどもたちが元気に遊ぶ→親も先生も経営者もうれしい→考えた人もうれしい。
「うれしい」がぐるぐる循環している。いい仕事だなあ。

レバレッジメモ
・人間同士はたやすく分かり合えない。だからこそ、誠意を込めて相手を理解しようとする姿勢が大切だ。
・共感を得るためには自分が内容にリアリティを持てるかどうか。個人的に好きなことと社会で共有できる価値かどうかを見極めることが大切。
・プレゼンは自分の気持ちを相手に“プレゼントする”という姿勢が大切
・いかに自分との接点を持って仕事に取り組めるかがクリエイティブの原動力になる。

佐藤可士和のクリエイティブシンキング

佐藤可士和のクリエイティブシンキング

おまんのモノサシ持ちや! /篠原 匡

次々にヒット商品を生み、地方を再生させてきた高知のデザイナー梅原 真を日経新聞アウトロー?長髪パーマにTシャツリュックのイケメン記者(私と同い年)が成功のメカニズムを取材していくなかで幸せに生きるということへの本質にまでたどり着いた梅原 真デザインの解説書。

読後感
デザインは哲学だと思った。幼い頃の体験や風景や環境が梅原 真さんのアイデンティティを形成し、原動力になっていると思った。デザインとは“幸せとは何か(アイデンティティ)”を相手と自分と社会とをかけ合わせてビジュアル化したものかもしれない。

レバレッジメモ:「」は梅原さんの発言
「豊かさとは自分のモノサシを持つこと。それが幸せに生きるということやと思う。」
「コミュニケーションのスイッチが入った」
「今の観光ポスターは来てちょうだいというものばかりやろう。けんど、自分のスタンスを表明するほうが相手は認識してくれるんと違うか」
「商売はこころざし。顔と顔を突き合わせてこいつはいいなと思うところから商売は始まるんじゃ。自分の考え方や人格を表明せんと、誰がものを買うてくれるか」
「じょうごで絞った一滴を描きなさい」
「デザインは本質をつかむこと。以上、終わり」
企業であれ、地方であれ、まず自分自身を認識するところから始まる。梅原が指示しているのはこのことに尽きる。
彼の作品の根っこにあるのは地域や住民のアイデンティティ。それが滲み出ているからこそ、消費者の心を打つ。

おまんのモノサシ持ちや!

おまんのモノサシ持ちや!

プロフェッショナルアイディア/小沢正光

〈読後感〉
力をもらい背中を押してくれる一冊。
普段感じているけど、言葉化出来ていないことを体系的に示してくれているので、「なるほどこういうことだったのか」とひざを打つことが多かった。それが博報堂で30年にわたり広告クリエイターをされてきた方からの言葉なのでまちがいないだろう。
本書には何度も「アイディア開発には壁に貼ってみること」が大事と書かれている。
以前デザイン事務所にいたときは個人デスクをパーティションで区切っていたので、資料やカンプを壁に張り、俯瞰的に客観的に観ることをしていた。誰かに言われてとか、やってるのを見てではなく、自分で自然に試行錯誤してやっていた。今は環境的にそうではないので、デスクの上に置けるぐらいのホワイトボードをパーティション的に壁にしてみようかな。

レバレッジメモ〉
◉アイディア開発の基本手法
◯3回3ラウンド  書き出す/整理する/チョイスする
◯壁に貼る  壁は世の中そのもの
◯ワンオペレーション、ワンコンセプト  アイディア開発の最大の敵は「ながら」。アイディアは頭を使うだけに同時作業はできない。

◉アイディア開発の応用手法
◯アリモノ  オリジナリティは奇抜な個性のことでなく、誰もが思いつきそうなことを誰よりも深く考えたときに付加されるもの
◯ビッグアイディア  とは「大きな思想」。人の心を動かすのはインパクトではなく思想。ビッグアイディアはつくるものではなく、対象を見つめて咀嚼して見つけるもの。

◉アイディアが生まれる会議の法則
◯アイディアを生む言葉  モチベーションを高めること、緊張をほぐしてやること。「最初からすごいアイディアはない」
◯アイディア会議にはディレクション(方向を指し示す)のキーワードが求められる。
◯立て直しの言葉  クライアントにNGを出された日にはなにもせず、全員に自由の時間を与える。「クライアントに通らないアイディアは市場みも通らない」
◯アイディアに必要なのはポジティブな精神
◯アイディアのヒントは人の言葉のなかにある

◉アイディアスキルを育てるために
◯アイディア開発の能力は階段状に向上する。トレーニングを怠ると実力が下がるだけ。

プロフェッショナルアイディア。欲しいときに、欲しい企画を生み出す方法。

プロフェッショナルアイディア。欲しいときに、欲しい企画を生み出す方法。

「明日の広告」佐藤尚之

印象に残った一文

・偶然出会うから記憶に残る。これこそ基本的な広告の構造
・広告は今まで一方的な「話し上手」であったが、今後は「聞き上手」になって消費者の意見を真摯に聞くべき
・どんなに行動が細分化しても、人は人と共有して初めて楽しさを感じる
・あらゆるメディアを最適に組み合わせて、効果の最大化を図り、そこにクリエイティブを載せる
・とことん消費者本位に考える
○伝えたい相手はどんな人達か ○相手がいちばん望んでいる事をする ○伝えたい相手にだけ伝えるというスタンス
人はいいコミュニティには入りたがる。楽しそうなイベントには加わりたがる。そういう空気を創り出すのは濃く狭く伝えるからこそ。

・料理を出す時その食材がいかに良いものかをニコニコ話して伝えるだけで、その客は料理を2倍おいしく感じる。ひとつ上のもてなし、もっと喜んでもらえる工夫、再訪したくなる楽しさこそ、クリエイティブのチカラ

・消費者の心に何らかの価値変容を起こさないものを広告とはいえない

「明日の広告」を読んで、

“人の思いを聞く”ことが重要じゃないかと思った。
今は誰もがウェブによって発言する場所と機会を得た。その分、情報の渦のなかで聞いてくれる人が減ったのかもしれない。
1年ほど前、病院にいったとき、たいした問診もなく、症状を見て、かんたんな説明で治療薬を出された。私は「なぜ症状が出たのか」プロの意見が欲しかった。また、気持ちを聞いて不安を取り除いてほしかったように思う。
治ればいいわけじゃない。安ければいいわけじゃない。物だけが欲しいわけじゃない。味だけがおいしければいいわけじゃない。とイチ消費者として思うときがある。
「これからは感動とかセンスとかいうものが価値を上げていく『魂の満足』を求める社会になっていく」これは糸井重里さんの言葉だが、全くその通りだと感じる。